はす向かいにて

柴沼千晴/日記や文章

日記本『親密圏のまばたき』について

このタイトルが最初に思い浮かんだときのことを、もうはっきりとは思い出せないけれど、いつもタイトルを決めるときにはこれ以外考えられない、という気持ちになる。決意というより諦念のような、もうその視線から逃れられない、運命のような。 2023年12月10…

2022/9/25

この日の日記は、me and you little magazine & club「同じ日の日記」に掲載されています。こわいもの/柴沼千晴 | me and you little magazine & club 天気が良すぎてこわい、ということを、自分で思ったのか誰かが言っていたのか忘れてしまった。月に何度…

2020/5/14

花をかたどったフィナンシェが、日常に溶け込むタイプの宝石のようだと思えたこと。誰が触ったかわからないトングで取る無防備なサラダバーが恋しいこと。季節にゆるされたわたしたちが堂々とひかりの下で肯定を交わしあう夏まで、あとどれくらいの陽射しが…

2020/5/11

日記を書こうと決めたのは、今日の昼下がり、こないだの最悪な休日に買っておいたちょっといいドリップコーヒーを入れようとしたらカップのふちに引っかけるツメがぼろっと取れてしまい、注いだお湯がコーヒーの粉で満たされていくのをぼうっと眺めていると…

2019/10/31 誰もが光を握っている

カネコアヤノを銭湯で観た。 2019年10月31日、祝日でも何でもない木曜日の昼下がりに、わたしは高円寺にいた。ハロウィンだということも思い出さないまま、みるみる冷え込む季節の始まりに気がつかないふりをしながら、この街でわたしだけが舞い上がっている…

2019/9/20 思い出ではない日々のゆくえ

天気の話は、気まずいエレベーターの中の空気を和ませるためでも、あんまり乗り気になれない打ち合わせのアイスブレイクのためでもなく、本当に天気が良い時にしたいものだなあと思う。小洒落た居酒屋でクラフトビールを飲むのもいいけれど、夏の終わりには…